相続法の改正で葬儀に関わること
お金の豆知識
2019年施行の相続法改正により、以下の項目が改正されました。
1 配偶者居住権の新設
配偶者居住権は、配偶者が不動産の所有権を取得しなくても、家に住み続けられる権利が創設された。
2 自筆証書遺言の作成方法
自筆証書遺言の遺産目録はパソコンを使って作成してもOK。しかし、パソコン使用は添付書類だけ。遺言書自体は今まで通り手書き。
3 自筆証書遺言の管理方法
法務局で自筆証書遺言を保管してもらえるようになった。
4 特別の寄与の制度創設
法定相続人ではなくとも相続人に金銭請求できるようなった。
5 配偶者への居住用不動産贈与を特別受益の対象外に
婚姻期間が20年以上の夫婦の場合に居住用不動産を生前贈与した場合、「特別受益」の対象外となる。
6 遺留分請求で生前贈与の期間が限定される
遺留分減殺請求の対象期間を「相続開始前10年」に限定。名称は遺留分減殺請求権が「遺留分侵害額請求権」となる。
7 預貯金の早期払い戻し
出金したお金で葬儀費用を支払ったり当面の生活費に充てたりすることも可能となります。
この項目の中で、7の「 預貯金の早期払い戻し」という項目が、自分が亡くなったとき、または、家族が亡くなったときに関わってくると思います。
葬儀の際に死亡届を提出して、金融機関に故人が亡くなったことの事実を知らせた後、口座が凍結してしまうとお金が引き出せなくなることはご存じだと思います。(金融機関は、口座の名義人が亡くなったという事実を知った時に口座を凍結します) 亡くなった方の預貯金は遺産分割の対象で、以前は口座が凍結されると遺産分割について相続人全員が合意しなければ口座の凍結を解除できず、預貯金を単独で払い出すことができませんでした。 葬儀の費用は必要になり、家ごと遺品整理をしないといけない場合もあり、いろいろとお金がかかります。一度口座が凍結されると、法定相続人間での遺産分割が終了するまでは全くお金を引き出すことができません。
今回の相続法の改正で、「預貯金の早期払い戻し」ができるようになったことで、預貯金について一定の金額内であれば、家庭裁判所の判断を待たずとも金融機関の窓口で払い戻すことができるようになりました。
相続開始時の預貯金の額×1/3×払戻しを行う法定相続人の法定相続分
この計算式によって算出された金額の払い戻しが可能となります。ただし、ひとつの金融機関から引き出せるのは最大150万円までと上限が決められています。
※(例) 相続人が、長男、次男の2名で相続開始時の預貯金が、1口座の普通預金600万円であった場合
長男が単独で払い戻しできる額 = 600万円 × 1/3 × 1/2 = 100万円
※参考 一般社団法人 全国銀行協会
これにより、遺産分割が完了する前でも故人の預貯金からの払出しが、これまでよりも容易に行えるようになりました。あくまでもこれは緊急措置的な方法のようで、金融機関としては払い出しをしようとする人が、間違いなくその権利を持つ人なのかどうかを厳重に確認することになり、この制度を利用しようとするにしても、必要書類を準備してから手続きにいかないといけません。
必要書類
- 被相続人(亡くなられた方)の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡までの連続したもの)
- 相続人全員の戸籍謄本、全部事項証明書
- 預金を払戻しを希望される方の印鑑証明書
口座が凍結されてしまった場合において、どうしても必要な金額を用意しないといけないケースには、この制度を利用してもいいかもしれませんが、大切な方が亡くなった際は、親族は気持ちも整理できないまま、冷静な判断もできず、混乱してしまうかもしれません。
相続が争続になってしまうというのは有名な話で、起こり得る家族間での争い事を避けるためにも、できることなら、家族のどなたかが必要な金額を立て替えるなり、生命保険がおりたときに支払うなどの対応が望ましいとのことです。
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